今回は私の大好きな花の一つ、
あじさいをご紹介します。
6月生まれの私には
あじさいには格別の思いがあります。
母の庭にも
たくさんの種類のあじさいが咲きます。
でも意外にあじさいのことってよく知らない・・・。
ということで、
あらためてあじさいと向き合ってみることにしました。

 

  あじさい Hydrangea
  

 

 

和名:アジサイ
分類:バラ目ユキノシタ科アジサイ属
別名:アズサイ、テマリバナ、七変化(シチヘンゲ)

名前の由来:
アジサイの名は、真青の花が集って咲く姿から、
集めるの「あづ」に真青を意味する「さあい(真藍)」の「アヅサアイ(集真藍)」が変化して「アジサイ」となったといわれているそうです。

庭木としては、日本から西洋に渡り品種改良された
セイヨウアジサイが多く見られますが、
日本に多くの種類が自生する、古来から日本人になじみ深い植物です。
世界には約30種のアジサイがアジアと南北アメリカに分布していますが、
そのうち12種ものアジサイが日本に自生しています。
まさに日本の花、アジサイ。

最近ではセイヨウアジサイの中でも鉢物として出回っているものを
「ハイドランジア」と呼んだりしていますね。
ハイドランジアはアジサイの学名からきています。

アジサイを西洋に紹介した人物として有名なのは、かのシーボルトです。
彼が記した『FLora Japonica(日本植物誌)』には、
手まり型のアジサイの花が「Hydrangea Otaksa」として紹介されています。
この「Otaksa」は、シーボルトが日本の愛人「お滝さん」を想い
彼女の呼び名を名付けたとされています。
シーボルトにとってもアジサイはひときわ愛着のある、
日本の花だったのでしょうね…。

 

  
 
  
 
 あじさいの分類って? 
 ひとくちに「アジサイ」と言いますが、アジサイにはどんな種類があるんでしょう?
イメージする花と全然違うのにアジサイの仲間だったり、
同じような花の形なのにアジサイではなかったり…。難しいですよね。
アジサイの分類を調べると、よく園芸種のことについての分類なんかがまとめられていますが、
植物学上では、どのように分類されていて、どこまでが「アジサイ」なんでしょうか?
ちょっと整理してみましょう。

※植物名をクリックするとその花の写真を見ることができます(一部)
ユキノシタ科(Saxifragaceae)アジサイ属 (Hydrangea) に属しているもの
■ガクアジサイ Hydrangea macrophylla f. normalis

家に植えられている、一番身近なアジサイたちの多くがこのガクアジサイ系のアジサイです。
もともと神奈川や伊豆地方などの暖地海岸に近い山地に生えている種で、ヤマアジサイに対してハマアジサイとも言われますが、古くから庭などで栽培されています。
ガクアジサイはその名の通り、中央に小さな両性花、周囲に大きな花のように見える装飾花が縁取ったアジサイです(いわゆる額縁型)。高さは2m位になり、厚みと光沢のある倒卵形の大きな葉をしています。
以下の身近なアジサイたちも皆、このガクアジサイの系統になります。また、これらガクアジサイ形の突然変異種として、装飾花が器のようにくるっと巻いたカタチになる「ウズアジサイ」という変わったアジサイもあります。

   アジサイHydrangea macrophylla f. macrophylla
ガクアジサイの両性花がほとんど装飾花になっているもの(いわゆる手まり型)がアジサイです。
総称のアジサイとの混同を避けるため、ホンアジサイという呼び方もすることがあります。
セイヨウアジサイHydrangea macrophylla f. hortensia
様々なアジサイが西洋で改良されたものがセイヨウアジサイです。
ガクソウHydrangea macrophylla f. rosea
額縁型の装飾花の縁に鋸歯がわずかにあり、紅色に染まるもの。いわばガクアジサイ系のベニガク。
人気の八重花系品種の「城ヶ崎」や「隅田の花火」「十二単」などは、この「ガクアジサイ」系のアジサイです。
■ヤマアジサイHydrangea serrata

日本の山に自生するアジサイ。とにかく変異の幅が広くて多くの変種が区別されます。ヤマアジサイの花は基本的にガクアジサイのような額縁型です。ガクアジサイとの違いは、高さが1m位と低木で、全体にコンパクトであることと、葉。ヤマアジサイの葉は、薄くて光沢がなく、ちょっと細長い感じです。葉に毛が生えていたりもします。全体に侘びた感じがする、いかにも日本的な容姿です。最近園芸店ではこのヤマアジサイ系の品種が多いですね。以下にヤマアジサイ系のアジサイをいくつかあげてみましょう。

          ベニガクHydrangea serrata f. rosalba
ひし状円形の装飾花の縁に鋸歯を生じ、白から紅色に染まります。
シチダンカHydrangea serrata f. prolifera
シーボルトが紹介して以来見つからず、久しく幻の花とも言われましたが、六甲で発見されてからは園芸種としてもすっかりおなじみとなりました。ヤマアジサイ系で装飾花が八重になるものです。
マイコHydrangea serrata f. belladonna
ヤマアジサイの中でもほとんどが装飾花になり、手まり型に花を咲かせるもの。
アマチャHydrangea serrata var. thunbergii
この種だけでなく、ヤマアジサイの中で葉に甘みのあるものを総称してこう呼びます。
このほかにも、
雪国の山に咲く エゾアジサイHydrangea serrata var. megacarpa)、
古くから栽培されてきた、ヒメアジサイ(Hydrangea serrata f. cuspidata) などが知られています。
■コアジサイHydrangea hirta
中濃地方の山々にもたくさん咲いていて、私も大好きなかわいいアジサイ。装飾花がなく、派手さはありませんが、風通しのいい湿った沢づたいに咲く風情は、本当に美しいです。淡碧色や、白、薄紫など、咲く場所によって色味が少しずつ違います。
■ガクウツギHydrangea scandens
別名はコンテリギ。高さが1〜1.5mくらいになる落葉低木。葉が長楕円状または狭卵形で、表面が深緑色で独特の金属光沢があるため、光の加減によって木々の緑の中でまるで紺色に輝いて見えます。淡黄緑色の両性花の縁に、ふつう3片の萼片を持つ白色(ときに淡黄色)の装飾花があります。
装飾花が赤紫色になる「ベニガクウツギHydrangea scandens f. rosea)なんていうのもあるそうです。
■コガクウツギHydrangea luteo-venosa

ガクウツギによく似ていますが、全体に小型(花序もガクウツギが8〜10cm、コガクウツギは3〜5cm、葉はガクウツギが4〜7cm、コガクウツギは2.5〜5cm)。葉にのふちにあらい鋸歯があり、やはりときに紺色に輝いて見えるのが特徴。装飾花は白色で、萼片が3〜4片あります。
コガクウツギの仲間で装飾花が八重になるものがあり
花笠」という名前で売られています。また、コガクウツギとヤマアジサイが自然交配したとされる品種もいくつか園芸店で売られています。母庭にはその中のひとつ、「伊予の五月雨」があります。

■ノリウツギHydrangea paniculata

日当たりのよい山野に生えます。高さが5m近くにまでなり、内皮の粘液が和紙の糊料に使われたことにちなんだ名前で、ノリノキ、サビタの別名でも知られます。枝先に円錐型の花序をだし、小型の両性花と周囲に直径1〜5cmの白色の装飾花をつけます。装飾花はふつう4片です。
いくつか亜種がありますが、愛知県には「ビロードノリウツギHydrangea paniculata var velutina)」があります。
花のほとんどが装飾花になったものに、ミナヅキがあります。

■タマアジサイHydrangea involucrata
山の谷川沿いなど水辺に生えます。このアジサイの特徴はなんといっても名前の由来にもなっているつぼみ。ふつうイメージするアジサイとはかけはなれた、花全体がひとつに包まれた玉のようなつぼみなのです。つぼみが開くと、薄紫色の美しく小さな両性花を、3〜5片の萼片を持つ白い装飾花が取り巻いています。花序が球形でほとんどが装飾花になるテマリタマアジサイHydrangea involucrata f sterilis)、園芸種で装飾花と両性花が八重になるヤエノギョクダンカHydrangea involucrata cv Hortensis)がこの仲間です。
■ツルアジサイHydrangea petiolaris
山地で幹や枝から多くの気根を出して、黄や岩をはい上り、長さが15mにも達する蔓性のアジサイです。葉は長さ5〜10cmの広卵形で先がとがっており、ふちに細い鋸歯があります。花は6〜7月に多数の両性花とそれを縁取る白い装飾花をつけます。装飾花の萼片は3〜4枚あります。

このほか
■リュウキュウコンテリギHydrangea liukiuensis
■ヤクシマアジサイ(ヤクシマコンテリギ)
Hydrangea grosseserrata
■ヤハズアジサイHydrangea sikokiana
■ヤエヤマコンテリギHydrangea yayeyamensis
がアジサイ属に属します。この計12種(■印)が日本に自生するアジサイです。
野生には、自然雑種や亜種、変種も多く存在します。

アジサイ属 (Hydrangea)には属していないけれど---でもアジサイに似ている日本の花たち
ユキノシタ科イワガラミ属(Schizophragma)
■イワガラミ
Schizophragma hydrangeoides
ツルアジサイによく似ている、岩や木に絡みついてのぼる植物。一番の見分けは、装飾花のガク片の枚数で、ツルアジサイが4片なのに対して、イワガラミは1片しかありません。
ユキノシタ科クサアジサイ属(Cardiandra)
■クサアジサイCardiandra alternifolia
アジサイの中でも樹木ではなく草に分類されるもの。質素でとてもひかえめな花を咲かせます。
海外原産のアジサイ (Hydrangea)たち
■カシワバアジサイ
Hydrangea quercifolia
■アナベルHydrangea arborescens 'annabelle'
どちらも北アメリカ産のアジサイですが、庭ではお馴染みになってきましたね。
 
※ワンポイント!
一見、花の姿がアジサイに似ているけれど属している科も違う花もありますね。
スイカズラ科ガマズミ属「オオデマリ」(Viburnum plicatum var. plicatum) や
ヤブデマリ」(Viburnum plicatum var. tomentosum)などがその代表です。
ガマズミ属の仲間には、このようにアジサイによく似た花型をしたものが多くありますが、
アジサイの仲間ではありません。
   

 

※あじさいはエングラーの体系ではユキノシタ科アジサイ属ですが、
クロンキストの1988年に発表した分類体系では、草本の属をユキノシタ科とし、
基本的には木本のものをアジサイ科(Hydrangeaceae)とし、イワガラミやウツギなどもアジサイ科に含んでいるようです。
ここでは日本の図鑑で多く用いられているエングラー体系での分類でご紹介しています。
学名・分類は主に『日本の野生植物 木本I 』(平凡社 1999年6月16日発行)によっています。
※学名の命名者名は省略して表記しています。

***参考文献*** 
『日本の野生植物 木本I 』(平凡社 1999年6月16日発行)
『改訂増補 牧野新日本植物図鑑』(北隆館 1995年7月20日発行)
『原色日本植物図鑑 木本編II 』(保育社 1980年3月1日発行)
『山渓カラー名鑑 日本の樹木』(山と渓谷社 2002年3月15日発行)
『日本のアジサイ』(山本武臣編集 社団法人一関観光協会 2002年5月26日発行)
京都大学電子図書館HP掲載『日本植物誌 Flora Japonica』
 (http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/b01/b01cont.html)

 

 


 
母の庭のあじさいたち

 

母の庭のあじさいには
ガクウツギ、ノリウツギ、コアジサイ、
タマアジサイ、ヤマアジサイ、
ガクアジサイ(アジサイ、セイヨウアジサイ)、
仲間のイワガラミ、クサアジサイがあります。
上の表から名前をクリックすると写真がご覧いただけます。
「旬の庭」にも登場しますのでぜひご覧くださいね♪



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